日本酒も地産地消。愛知の酒造好適米「夢吟香」を使った知多のお酒8選。

知多半島は古くから醸造が盛んな地域です。
その代表的な企業にミツカンがあります。
江戸時代、それまでお酒から酢が作られていたところ、酒粕から酢を作る技術を開発。酢を安く作れることになり、これが大消費地江戸で大当たり。江戸前寿司の大流行に繋がったことは有名な話です。

酢以外にも味噌、たまり醤油、お酒といった醸造製品は半田をはじめとした知多半島の一大産業に。天然の良港に恵まれ海運業の隆盛も手伝って、醸造製品が江戸に向けて大量に出荷されていたようです。

日本酒の酒蔵も半田、亀崎を中心に最盛期には200軒以上が軒を並べる一大生産地となりました。江戸時代末期には知多のお酒は江戸市中で灘のお酒と人気を2分していたそうです。
そのころの江戸は人口100万人を超える世界最大の都市。かつての知多酒の隆盛ぶりが伺えます。

今回は業務と関係ないのですが、
地元の酒蔵を応援したいということでお酒がテーマです。

「地元の気候風土で栽培されたお米でお酒づくり」

現在愛知県には日本酒を製造する酒蔵が42軒あります。これは全国で第7位の軒数だそうです。そのうち知多半島に酒蔵は6蔵が残っています。江戸末期から明治初期にかけての最盛期からは大きく減少してしまいましたが、それぞれ工夫をされて品質の良い日本酒を製造されています。

個人的に注目しているのは
地元の原料を使って製造されているお酒。
知多半島や西三河の農家さんがつくったお米を原料に酒造りが行われています。

そのお米というのが「夢吟香(ゆめぎんが)」。
愛知県の農業総合試験場で2010年に開発された酒造好適米(酒米)です。
酒米として非常に有名な「山田錦」と、愛知県の酒造好適米として先輩にあたる「若水」を掛け合わせて育成されたそうです。

倒伏に強いため平地での栽培に適していて、知多半島そして、安城など西三河の平地が広がる愛知県の地域特性、気候風土に合ったお米です。農家さんもそれぞれ工夫をしてこの新しい酒米に挑戦をされています。
夢吟香は晩生種で食用米と刈り取り時期がずれるのも農家さんにとっては良いですし、酒蔵が農家さんから直接購入するケースも多いお米。
蔵元からすれば商社を通さずに安く買えて、農家さんからすれば高く売れる、双方に良い酒米なのです。
地域にとってメリットが多くなりますね。

「夢吟香を使用した知多の注目銘柄」

旨味の強い「若水」と、大粒でより多く磨く(精米する)ことができる「山田錦」の良いところを合わせ持ち、スッキリ爽やかで旨味もしっかりある日本酒ができるのが特徴の「夢吟香」。
開発されてから10年とまだまだ新しいお米ですが高い評価をされつつあります。
2019年に行われたG20サミット外相会議での夕食会では、食中酒として原田酒造さん(知多郡東浦町)の「生道井(いくじい) 純米大吟醸 夢吟香」が採用され、好評を博しています。

さて夢吟香を使用した知多半島のお酒を紹介します。

原田酒造合資会社

生道井(いくじい)夢吟香 純米大吟醸

生道井(いくじい) 夢吟香  G20サミット外相会議での夕食会で採用されました

生道井(いくじい)夢吟香 純米大吟醸 斗瓶どり

生道井(いくじい) 夢吟香 斗瓶どり

夢吟香 精米歩合50%
元々名城大学農学部の学生と共同開発でつくられたそうです。
前述の通りG20外相会議の夕食会で採用された、きれいな飲み口のお酒です。安城市などの愛知県内の農家さんから直接仕入れたお米を使用してつくられています。
下の写真はその中でも「斗瓶どり(とびんどり)」という特別仕様のものです。
お酒を搾る時に圧をかけず、袋に入った醪(もろみ)の重量だけで時間をかけて少しずつ搾ったもので、余分な雑味が少ないという特徴があります。
通常の搾り方の商品と飲み比べてみても良いですね。

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盛田金しゃち酒造株式会社

金鯱 夢吟香 純米
初夢桜 夢吟香 純米吟醸酒

金鯱 夢吟香
初夢桜

金鯱 夢吟香  精米歩合65%
しっかりと味を出すために、米を磨きすぎず精米歩合を65%(35%精米)に抑えた純米酒。米の旨みを感じられるお酒です。

初夢桜 精米歩合60%
かつて天埜酒造(1848年創業、2010年廃業)の銘酒として地域に親しまれた「初夢桜」の名前を冠した吟醸酒。
爽やかさもありながら、中部地域独特の濃い味付けの料理に負けないしっかりしたお米の旨みを感じられるお酒です。
香りも良いです。
金しゃちさんのこの2本、味をきちんと出そうという意図を感じます。美味しいです。

盛田金しゃち酒造さんの夢吟香は、地元知多半島阿久比町の農家さんがレンゲ農法で作ったお米を使用しています。
レンゲ農法というのは昔はよく見られた農法で、レンゲの窒素を蓄える性質を利用し、化学肥料を使わないもしくは使用を大幅に減らした農法です。稲の刈り取り後の田んぼにレンゲを撒き、春に花を咲かせたレンゲごと耕して土にすき込み元肥とします。
強い稲に育ち農薬も減らせるので、環境に優しい農法です。

地元の農家さんが手間暇をかけて丁寧につくった米を原料にしています。しかも化学肥料は使わず低農薬。安全で安心できる原料を使って酒造りに挑戦をされています。

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澤田酒造株式会社

白老 夢吟香 純米吟醸 火入れ

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夢吟香 精米歩合55%
常滑産の夢吟香を45%精米してつくられた純米吟醸酒。
精米歩合は高いですが、白老らしさでしょうか、まったりコクのあるお酒です。酸味も感じます。
澤田酒造さんは知多半島の丘陵地の湧き水を引いて酒造りに取り組んでいます。

焼き物のまち「常滑」で1848年に創業した澤田酒造さん。沿革から驚くのは、明治後期に速醸酛(そくじょうもと)を発明した江田鎌治郎氏を招き地域における速醸酛の技術発展に貢献をされているということ。
また愛知県の酒造好適米第1号である「若水」の導入においても地域の農家さんと共に生産ノウハウを構築されたといいます。いわば知多の伝統的な酒造におけるリーダー的な存在です。

速醸酛(そくじょうもと):製造過程で雑菌汚染を防止するために乳酸を添加する技術。1909年(明治42年)に当時の醸造試験所(現在の独立行政法人酒類総合研究所)の江田鎌治郎氏が開発した。蔵や醸造の道具に住みつく天然の乳酸菌を使用する「生酛(きもと)」に比べ、製造日数が短縮され品質も安定した。

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丸一酒造株式会社

ほしいずみ 純米大吟醸 夢吟香40%

ほしいずみ 夢吟香 精米歩合40%

夢吟香 精米歩合40%
阿久比・常滑で生産された夢吟香を40%まで精米してできたお酒。果実のような香りが爽やかできれいな味。
後から旨みがじわりときます

通常「夢吟香」は精米歩合50%程度が限度と言われています。そこからさらに10%磨いてつくったお酒です。
想像通り”クリア”、すごくきれいで真っ直ぐな味わいです。
仕込み水も良いのかなと感じさせられます。
いわゆる日本酒くささが少ないので、日本酒が苦手な人でも「これ美味しい!」となることと思います。
冷やしてもワイングラスで吟醸香を楽しめるので、海外の人にもとてもお薦めしたいお酒です。
この果実を感じさせる香りがお米と酵母からできているなんて!
感動させられます。

ほしいずみ 純米大吟醸 夢吟香50%

ほしいずみ 夢吟香 精米歩合50%

夢吟香 精米歩合50%
阿久比・常滑で生産された夢吟香を50%まで精米してできたお酒。40%のほしいずみよりも旨みが強い。
同じ銘柄の40%と50%の違い。飲み比べてみるとよくわかります。面白いです、ぜひ飲み比べてみてください。
個人的には日本酒らしい旨みを感じられる50%の方が好みではあります。

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盛田株式会社

盛田 純米吟醸 無濾過

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夢吟香 精米歩合58%
米本来の旨みを残すために無濾過で仕上げた深い味わいの純米酒。精米歩合「58%」というところにも作り手の意図を感じますね。60%から吟醸酒となりますので、そこから2%わずかに磨いてバランスを調整しているんですね。それともまだまだ試行錯誤中でしょうか。
良い意味でクセがあります。酸味も感じます。これが無濾過ならではのお米の風味なんだと思います。裏ラベルにもありますが氷を入れてロックで飲んでも美味しいです。

無濾過:通常醪(もろみ)を搾ったあと、雑味やにごりを取るために濾過をします。濾紙やフィルターで濾過されることが多いのですが、活性炭を使用してクリアな色を出す蔵元もあるそうです。無濾過というのは、その濾過をしていないということなので、純米酒本来のコクをしっかり感じることができるお酒ということになります。

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秋の夜長、お酒をお米の違いを感じながら味わうのも良いですね。
例えば山田錦でつくられたお酒と夢吟香でつくられたお酒。
同じ蔵元の同じ精米歩合の純米大吟醸で原料米の違いを比べてみると、山田錦と夢吟香の違いがわかります。
精米歩合40%で原料米の差を丸一酒造さんのお酒で比較してみます。
・ほしいずみ (夢吟香 精米歩合40%)
・滔滔 (山田錦 精米歩合40%)

感じ方はもちろん個人差はありますが、その前提の上で。
果物のような吟醸香は共に感じられますが
より日本酒としてのパンチを感じるのは山田錦。
よりスッキリ爽やかさを感じるのは夢吟香。スッキリの後に旨味もじわりと感じます。

丸一酒造さんの滔々(山田錦 精米歩合40%)とほしいずみ(夢吟香 精米歩合40%)

好みは人それぞれだと思いますが、個人的には地元びいきもあって夢吟香。スッキリした飲み口のお酒なので冷やして飲むのがおすすめです。香りがひきたつのでワイングラスでも楽しめます。
地元の農家さんが丁寧につくったお米が原料になっている、共存共栄が実現されているところも共感ポイントです。
また、地産地消はSDGsの取り組みにも関連性が高いとされています。

購入の際はそれぞれの酒蔵直売店または日本酒の専門店での購入がおすすめです。
量販店やショッピングセンターのリカー売り場、一般的な酒販店では原料米や精米歩合の違いは解説されていません。店員さんに聞いても答えられないことが多いです。
印刷会社としてはこの辺りすごく改善の余地を感じています。